メディカルコンサルタントのブログ

こんにちは。私は、都内の某大学附属病院の救命救急センターに勤める医師(准教授)です。最近では管理職の仕事が増え、患者さんを直接診る機会が減ってしまい残念です。でもこのような形で、インターネットを通じて、皆さんの健康に関する相談に直接お答えできる機会を持つことで、臨床医として培ってきた知識や経験を、社会に還元してゆきたいと考えています。よろしくお願いします!期間限定となりますが、メールにて無料診断もやっています!

急にお腹が痛くなったら:(3)急性虫垂炎について

急性虫垂炎はよく「モウチョウ」と呼ばれている病気です。ドクターの間では「アッペ」と言います。子供から高齢者まで罹患します。虫垂という臓器が右の下腹部にありますが、ここに炎症が起こります。抗生物質の点滴で治るものもありますが(これを世間では「散らす」と言います)、手術が必要なものもあります。いずれの治療も行わなければ、死に至る可能性が高い病気です。昔の人(例えば江戸時代など)は、急性虫垂炎でも死んでしまったわけなので、長生きすることって本当に難しかっただろうと思います。
 
虫垂炎の症状の特徴は、始め”みぞおち”のあたりの痛みから始まることです。”みぞおち”の痛みと吐き気などで発症し、その後、発熱しつつ、半日から1日かけて痛みの部位が右下に移動します。このエピソードを聞けばドクターは虫垂炎を疑います。もちろん、最初から右下腹部が痛い虫垂炎もありますが、多くはみぞおちから始まります。また虫垂炎がひどくなってくると、歩くだけでも振動がそこに響くために、動くことが徐々に苦痛になってきます。結果、体をくの字に曲げた状態で、横になってじっと痛みに耐えている状況に陥ります 。
 
虫垂炎のタイプによっては抗生物質で散らせるものもあります。しかし一度炎症を起こした虫垂は、たとえ治ったとしても組織の弾力性が失われ、周囲に癒着するなど、元の通りに戻るわけではありません。つまり、その後、時間が経って再発し、次は手術が必要となった場合に、その手術が技術的に難しくなる可能性が高いと言えます。すなわち、手術の合併症が発生したり、後遺症が残ったり、入院期間が長引く可能性が上がります。そのような理由から、急性虫垂炎と診断され、医師に早期手術を進められた場合は、たとえ忙しくても、手術が怖くても、「早めに切り取ってもらった方が良い」と考えるべきと思います。手術を受けて、順調に経過すれば約1週間で退院し、元の生活 に戻ることが可能です。江戸時代なら死ぬ病気ですから、医学の進歩はありがたいものです。

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