急にお腹が痛くなったら(2):急性胃腸炎のさまざまな対症療法
「急性胃腸炎」は、深く掘り下げるならウイルス性や食中毒、または精神的ストレスなど、さまざまな原因が存在しますが、それらを鑑別検査する手段がほとんどないことや、いずれにせよ数日で治るという可能性を考慮し、ドクターとしては詳しい”原因”にはこだわるのではなく、今の症状を和らげることに取り組みます。
つまり、痛みに対しては「痛み止め」、嘔吐・嘔気に対しては「吐き気止め」、などを用いた対症療法(症状を抑える治療)を行います。
「急性胃腸炎」による腹痛の多くは、胃腸の平滑筋が緊張することによる「締め付けられるような痛み」です。これはおそらく、ウイルスや食中毒、または精神的ストレスによって胃腸がビックリして痙攣をおこしているような状況にあると思われます。これに対する痛み止めとしては、平滑筋の緊張を和らげるクスリ(抗コリン薬といいます)が用いられることが多く、しばしば著効します。
このような薬を用いて痛みをコントロールしながら、「あとは自然に完治するまで待ちましょう、数日間安静にしておいてください」(ドクター)、というのが急性胃腸炎です。
その他、下痢に対する対症療法として「止瀉薬」(下痢を止める薬)がありますが、一般論としては下痢をすることでウイルスや毒物を体外に出し切った方がよいので、無理に下痢を止めるのは有害という考えがあり、止瀉薬が処方されることはあまりありません。しかし下痢の頻度が非常に多い場合や痛みがひどい場合は、便の回数を減らすために適量の止瀉薬が処方されます。
また、当日や翌日が結婚式あるいは入学試験などの場合は、とにかくいったん下痢を止めることを重視して、十分量の止痢剤が処方されるなど、臨機応変な対応も行われています。