メディカルコンサルタントのブログ

こんにちは。私は、都内の某大学附属病院の救命救急センターに勤める医師(准教授)です。最近では管理職の仕事が増え、患者さんを直接診る機会が減ってしまい残念です。でもこのような形で、インターネットを通じて、皆さんの健康に関する相談に直接お答えできる機会を持つことで、臨床医として培ってきた知識や経験を、社会に還元してゆきたいと考えています。よろしくお願いします!期間限定となりますが、メールにて無料診断もやっています!

メールにて無料診断を行います

期間限定ですが、メールにて無料診断を行います。
ご希望の方は、症状等できるだけ詳しくお書き添えの上、
medicalconsultant.doctor.a@gmail.com
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※以上、予めご了承ください。

熱中症について

 熱中症は、脱水症状(体の水分が減っている状態)がベースになって発症します。人間の体温調節は、汗をかいて熱を放散する(=皮膚がひんやりする)ことで成り立っているので、汗をかくことができるうち、つまり汗になるための水分が残っているうちは問題ありません。しかし、汗をかきすぎて、水分のストックが減り、汗の量が減ってしまうと、熱の放散が滞 り、体温の上昇が始まります。これが熱中症のメカニズムです。
 
 
熱中症の初期症状は、のぼせ(立ちくらみ)に似た症状です。赤い顔をしてフラフラしているけど熱は38度以下で、まだ汗もかいている状況です。この場合は、涼しいところに移動して水分を摂取すれば回復します。学校の保健室などでも対応可能です。ただし、ここで塩分の補給を怠ると、低ナトリウム血症による筋痙攣(こむら返り)が起きてしまいます。熱中症には水分だけでなく塩分の摂取(ポカリスエット、梅干しのおにぎりなど)も同じくらい大事なのです。ひどいこむら返りが発生した場合は、病院に行って点滴を受ける必要があります。点滴さえすればすぐに治ります。
 
 
脱水が進行して発汗がさらに減ると、体温は38度を超えてきます。また、脱水による循環不全を防ぐために、心拍出量を上げようと体内のアドレナリンが分泌されるので、それにより余計に熱が上昇するという悪循環に陥ります。ここまでくると、意識はもうろうとしてきます。救急車で運ばれてくる患者さんの多くはこのタイプです。病院ではまずはクーリングと点滴が行われます。十分に点滴すれば、ほとんどの患者さんは意識が明らかになり、少し休んだのちに帰宅できます。
 
 
普通の生活環境であれば、これ以上にひどい熱中症になることはほとんどありません。しかし社会的・身体的弱者(赤ん坊や要介護の高齢者)はさらに病状が進行して、いわゆるショック状態や昏睡に陥ってしまうことがあります。 ショック状態や昏睡の患者さんは、発汗が完全に停止してしまっており、これは生命が危ういというサインです。また、近年では、猛暑の影響で、健常な成人でも熱中症によりショック状態になり、死亡するケースが増えています。真夏にスポーツする場合は、日本の夏は以前と違って、生命を脅かす危険域に達していることを知っておかねばなりません。
 
 
以上が熱中症のまとめですが、医師の観点からいうと、点滴の要/不要を見分けられることが重要です。皆さんにとっても、病院を受診するべきか(=点滴を受けるべきか)否かの判断が重要です。それについては、ここで述べたように、のぼせ(立ちくらみ)程度であれば点滴は必要なく、病院に行かなくても冷所で水分を摂取すれば自然に回復します。しかしひどいこむら返りや、意識がもうろうとしてきた場合は、病院へ運んでもらって点滴を受ける必要があります。そのタイミングを逃してしまうと(過酷な競技などを続けてしまうなど)、生命に関わるショック状態や昏睡に陥る危険があります。
 
今年も猛暑が続きますので、皆さんもお体大切に お過ごしください。
 

熱中症のイメージ

熱中症のイメージ

「めまい」について

f:id:medicalconsultant:20180110155240j:plain「めまい」の原因は多岐にわたります。圧倒的に頻度の多いものは、内耳性のめまいです。これは、耳の奥の三半規管が調子を崩すことで発生するめまいです。発作時の気持ち悪さは非常にツライものですが、生命に関わることはありません。これに対して、脳梗塞のめまいは、生命に関わること、および後遺症が残る点で、できる限り早期に発見し、治療を受ける必要があります。
 
すなわち、めまいは大きく

 

①内耳性のめまい

まず、①内耳性のめまいですが、これに対しては点滴や内服の「抗めまい薬」が効果を発揮することが多いです。救急で受診した際に、めまいに伴う”吐き気”のため薬も飲めない場合は、点滴の治療を受けることになります。救急車で運ばれた多くの患者さんは、1~2時間の点滴によって症状が改善し、歩いて帰宅が可能となります、残念ながら改善しない場合は、入院して治療を続けるか、あるいは、(薬で改善しないということは)脳梗塞かもしれないと考えて、そのまま脳梗塞の検査が行われます。
 

脳梗塞のめまい

脳梗塞の検査ですが 、確実に診断するためにはMRI(エムアールアイ)という画像検査が必要です。脳の撮影でよく利用される「CTスキャン」ですが、これは脳梗塞がはっきり写らないことがあり、MRIに比べて精度が劣ります。したがって、中高年や高齢者といった適齢期の患者さんである場合は、少しでも脳梗塞を疑ったらすぐにMRIを撮ることが多いです。脳梗塞は、一度発症してしまったら完全に治るものではありませんが、しかし早期治療を行うことで生命を守り、後遺症を最小限に抑えることが可能です。
 

 ③それ以外

最後に、③それ以外のめまいですが、人間は、体調を崩すとたいてい「めまい感」を覚えます。このような、体調不良にともなう一般的な「ふらつき・めまい感」は、③その他のめまいに当てはまります。しかし①②③のどの原因であっても、患者さんにとっては同じ「めまい」なので、ドクターはその原因検索を慎重に行っています。もし原因が③であった場合は、もとの体調不良の原因に対する治療が行われます。体調が改善すれば、その症状であった「めまい」は改善するはずです。
 
 
以上まとめますと、めまいで受診した際に、点滴などの薬でスッキリ治った場合は、内耳性のめまい、あるいは体調不良であった可能性が高いと思われます。もし、薬でスッキリ治らない場合は、あるいは重度の内耳性めまいか、重度の体調不良(これらは入院の適応あり)であるか、あるいは脳梗塞の可能性も考えて、MRIなどの検査が行われます。もし脳梗塞であれば、迅速な専門的治療が行われることになります。
 

急にお腹が痛くなったら:(3)急性虫垂炎について

急性虫垂炎はよく「モウチョウ」と呼ばれている病気です。ドクターの間では「アッペ」と言います。子供から高齢者まで罹患します。虫垂という臓器が右の下腹部にありますが、ここに炎症が起こります。抗生物質の点滴で治るものもありますが(これを世間では「散らす」と言います)、手術が必要なものもあります。いずれの治療も行わなければ、死に至る可能性が高い病気です。昔の人(例えば江戸時代など)は、急性虫垂炎でも死んでしまったわけなので、長生きすることって本当に難しかっただろうと思います。
 
虫垂炎の症状の特徴は、始め”みぞおち”のあたりの痛みから始まることです。”みぞおち”の痛みと吐き気などで発症し、その後、発熱しつつ、半日から1日かけて痛みの部位が右下に移動します。このエピソードを聞けばドクターは虫垂炎を疑います。もちろん、最初から右下腹部が痛い虫垂炎もありますが、多くはみぞおちから始まります。また虫垂炎がひどくなってくると、歩くだけでも振動がそこに響くために、動くことが徐々に苦痛になってきます。結果、体をくの字に曲げた状態で、横になってじっと痛みに耐えている状況に陥ります 。
 
虫垂炎のタイプによっては抗生物質で散らせるものもあります。しかし一度炎症を起こした虫垂は、たとえ治ったとしても組織の弾力性が失われ、周囲に癒着するなど、元の通りに戻るわけではありません。つまり、その後、時間が経って再発し、次は手術が必要となった場合に、その手術が技術的に難しくなる可能性が高いと言えます。すなわち、手術の合併症が発生したり、後遺症が残ったり、入院期間が長引く可能性が上がります。そのような理由から、急性虫垂炎と診断され、医師に早期手術を進められた場合は、たとえ忙しくても、手術が怖くても、「早めに切り取ってもらった方が良い」と考えるべきと思います。手術を受けて、順調に経過すれば約1週間で退院し、元の生活 に戻ることが可能です。江戸時代なら死ぬ病気ですから、医学の進歩はありがたいものです。

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急にお腹が痛くなったら(2):急性胃腸炎のさまざまな対症療法

 「急性胃腸炎」は、深く掘り下げるならウイルス性や食中毒、または精神的ストレスなど、さまざまな原因が存在しますが、それらを鑑別検査する手段がほとんどないことや、いずれにせよ数日で治るという可能性を考慮し、ドクターとしては詳しい”原因”にはこだわるのではなく、今の症状を和らげることに取り組みます。
 
 つまり、痛みに対しては「痛み止め」、嘔吐・嘔気に対しては「吐き気止め」、などを用いた対症療法(症状を抑える治療)を行います。
 
 「急性胃腸炎」による腹痛の多くは、胃腸の平滑筋が緊張することによる「締め付けられるような痛み」です。これはおそらく、ウイルスや食中毒、または精神的ストレスによって胃腸がビックリして痙攣をおこしているような状況にあると思われます。これに対する痛み止めとしては、平滑筋の緊張を和らげるクスリ(抗コリン薬といいます)が用いられることが多く、しばしば著効します。
  
 このような薬を用いて痛みをコントロールしながら、「あとは自然に完治するまで待ちましょう、数日間安静にしておいてください」(ドクター)、というのが急性胃腸炎です。

 その他、下痢に対する対症療法として「止瀉薬」(下痢を止める薬)がありますが、一般論としては下痢をすることでウイルスや毒物を体外に出し切った方がよいので、無理に下痢を止めるのは有害という考えがあり、止瀉薬が処方されることはあまりありません。しかし下痢の頻度が非常に多い場合や痛みがひどい場合は、便の回数を減らすために適量の止瀉薬が処方されます。

 また、当日や翌日が結婚式あるいは入学試験などの場合は、とにかくいったん下痢を止めることを重視して、十分量の止痢剤が処方されるなど、臨機応変な対応も行われています。

急にお腹が痛くなったら:(1)腹痛の2大カテゴリー

 救急外来において、「腹痛」はとても多い症候群ですが、多くは命に関わるものではありません。しかし、中には重大な疾患も存在しており、それらを見逃さずに拾い上げるのがドクターの仕事です。「腹痛」を訴えて受診された患者さんのうち、例えば「急性虫垂炎」や「腸閉塞」などの、明確な”病名”がつくのは1~2割程度と言われています。その他は、「理由ははっきりわからないが自然に治るだろう」といった診断になります。
 
 すなわち、まずは「腹痛」を大きく2つに分ける作業が、救急外来で行われます。 1つは「入院や手術が必要で、命に関わる疾患」。もう1つは「自然に治ると思われる病態」です。前者には明確に病名がつくことが多く、後者は検査ではっきりした異常が見つからないため、病名がつきにくい、あるいは「急性胃腸炎」など漠然とした病名がつきます。